今回はこのブログのタイトルにもなっているリーンゲインズについて解説していきます。ここ数年でポピュラーになってきたものの、「8時間以内なら何を食べても大丈夫」など間違った認識を持っている方が多いのも事実です。ここではリーンゲインズとはどういった減量法なのか、どんなポイントに気をつけて取り組めばよいのかボディビルダー・パーソナルトレーナーの立場から解説していきます。
リーンゲインズとは?
リーンゲインズはスウェーデン人のマーティン・バークハンによって考案されたプログラムで、インターミッテントファスティングという減量法の一種です。インターミッテントファスティングとは特定の時間枠ごとに断食を繰り返す手法で、リーンゲインズでは8時間の間(女性は10時間)に1日に必要な食事をとり、残りの16時間は断食するというサイクルを推奨しています。インターミッテントファスティングのバリエーションとして4時間の間食事をとり20時間断食するウォーリアーダイエット、24時間食事・次の24時間は断食というサイクルのイートストップイートといったものがあります。
また、メディアでは省略されがちなことですがバーベルを中心としたウエイトトレーニングを上記の食事法と組み合わせることも重要です。週3回を目安に全身まんべんなく鍛えるよう、スクワットやベンチプレス、チンニングなどコンパウンド種目を中心にトレーニングするのをマーティン氏はおすすめしています。
つまり、リーンゲインズは
減量において無駄をそぎ落とし、元も重要なことに集中するためのツールである
といえます。
枝葉の情報に踊らされてはいけない
現代のインターネット上には様々な食事法・トレーニング法が溢れています。現役のトップ選手やインフルエンサーも自分の食事やトレーニングを公開していて有用な情報も多いのですが、「必ずしも大勢の人にとって有効とは言えないもの」「負担の割に得られる効果が少ないもの」が非常に多いのです。それほど大切ではないことに気を取られてしまうと、本当に大事なことが継続できなくて思うように成果が出ない、辛くて挫折してしまうといったことになってしいます。
多くの競技者やインフルエンサーが当たり前のように実践・発信している「食事を1日5-6食の小分けにする」ということが代表的な例です。
一度にたくさん食べると太りやすいと言われてきましたが、実際は一日のカロリー収支が同じなら食事回数は太りやすさ、痩せやすさに大きな違いはありません。「腹筋を割りたい」「夏に堂々とビキニが着れる体になりたい」といった競技と関係ない人には全く不要なことなのですし、1日2食で競技に挑戦しても十分勝てる体をつくれます。
本当は重要ではない要素をなるべく少なくして必要なことだけに集中できるのがリーンゲインズというプログラムの特徴なのです。
そんなリーンゲインズで得られるメリットとはどのようなものなのでしょうか?
リーンゲインズのメリット
- 食事にかかる手間が省ける
8時間の間であればどのタイミングで食事をしてもかまいませんし、8:00~16:00や15:00~23:00など自由に時間枠を設定できるので個人のライフスタイルに合わせて自由に食事プランを調整できます。
仕事などの合間に小まめに食事するというのは思ったよりもストレスがかかるもの。朝が忙しいため朝食を抜く、ゆっくり時間が取れる夕食でたくさん食べるなどカスタマイズできるので、ストレスなく摂取カロリーや三大栄養素といった重要なポイントに集中できます。
- 空腹感が減る
断食という言葉からは想像しがたいですが、食事回数が減ることで1食あたりの量が増え満足感を得やすいのもリーンゲインズの魅力です。減量中でもお腹が満たされるタイミングがあるのは想像以上に楽ですね。一度にお肉600g食べたら満腹になりますよ(笑)。

そうは言っても断食中にお腹が減るんじゃ…
と不安になる方もいるかと思いますが、始めて数日で体がリーンゲインズのサイクルに慣れ、断食中の空腹を感じにくくなります。いつまでたっても空腹がしんどい人はカロリー制限が厳しすぎるかそもそも体質に合わない可能性があります。制限を緩めてみてもまだ辛くて合わないと感じたら別の方法を試すのがいいかもしれません。
もちろん1日5食や6食で問題なく生活できている人を否定するわけではありません。従来のフィットネス業界の常識に囚われずもっと自由に考えていいんですよ、というのがリーンゲインズの利点です。
- ストレスが減ることで無理なく減量できる
リーンゲインズは本当に必要なことを継続できるよう無駄を省いたプログラムです。そのためそれほど成果が期待できない雑多なことによる負担が減り、無理なく減量できます。
仕事や家庭とダイエットを両立していくのは簡単ではなく、大きなストレスにさらされることもしばしば。そんなときに「あれもこれもやらなければならない」という状態ではストレスに耐えきれず挫折してしまうこともあります。
リーンゲインズに取り組むことで、減量における優先順位を理解することができ、本当にやらなければいけないことのみに集中してダイエットを進めることができるので「やることが多すぎて続けられない」という状態を避けることができます。
どんなに効果的なプログラムでも続けられなければ効果がないのと一緒です。成果にばかり目がいきがちですが、ストレスなく続けやすいという点もリーンゲインズの大きなメリットなのです。
- 効率よく脂肪燃焼できる
16時間の断食中にエネルギー源が糖質から脂肪に切り替わるため効率よく体脂肪を落としていけます。断食によって身体が飢餓状態になり太りやすくなるという意見も目にしますが、インターミッテントファスティングでそのような状態になるとは考えにくいです。もしリーンゲインズ中に体脂肪が増えてしまったり急激に代謝が落ちたと感じている人はそもそものカロリー設定が間違っている可能性が高いです。カロリーと栄養バランスを見直しましょう。
2020/2/20追記
マーティン氏の運営していたオンラインサークルに参加されていた方とSNSで交流する機会があり、断食の効果について現在のマーティン氏の見解を聞くことができました。
残念ながら断食の効果はマーティン氏がリーンゲインズ考案時に想定していた程では全然ない、断食は食事面のコントロールツールでしかないとのことです。
私もこれまでの減量経験で同じことを薄々感じており、数ヶ月前から8時間の枠にこだわらず、よりストレスのかからないタイミングで食事をとるようにしていました。枠から外れる日が増えたからといって減量が進まないということもなかったですし、断食の時間にこだわる必要はないのかもしれません。あくまでも一番大切なことはカロリー収支と三大栄養素のバランスで、断食はそれを継続しやすくするための手段であることを忘れないようにしましょう。
とはいえリーンゲインズが無理なく減量を継続するための優秀なツールであることに変わりはないので、他の方法で上手くいかなかった人は是非挑戦してみて下さい。
リーンゲインズで必要なこと
簡単に説明すると①16時間断食・8時間食事 ②週3回目安のウエイトトレーニングの2点なのですが、リーンゲインズで体づくりを成功させるためのポイントを4つ解説していきます。
- 適切な摂取カロリーと三大栄養素を設定しなければならない
リーンゲインズに限らず全ての減量法に共通している大原則ですが、消費カロリー>摂取カロリーの状態であれば体脂肪は落ちていきます。逆に言うと8時間以内に1日の食事を済ませても消費する以上に食べたら太ります。「8時間以内なら何を食べてもOK」などと間違った知識を広めようとするメディアには騙されないでください。全ての基本はカロリー・三大栄養素の設定です。中でも1番重要なタンパク質は体重1kgあたり2gを目標に摂ることを心がけてください。
トレーニング日はカロリー高め・炭水化物多めの食事、休息日はカロリー低め・脂質多め(炭水化物を減らす)の食事をマーティンは推奨していますが、面倒な人は毎日同じ栄養バランスでも問題ありません。1週間トータルの摂取カロリー・三大栄養素が同じなら成果もそれほど変わらないので自分にとってストレスの少ない方を選んでください。
- 食事回数は自由
リーンゲインズにおいて1日の食事回数は自由に設定して構いません。極端なことを言えば1日1食でもよいのです(1食で1日分のカロリーが摂れれば、ですが)。「夜に食べると太る」「一度に吸収できるタンパク質量は限られているため食事は小分けにした方が良い」などとよく言われていますが、最も影響が大きいのは1日トータルの摂取カロリー・タンパク質量なので実は食事タイミングや1食のタンパク質量はそれほど重要ではありません。自分の生活スタイルに合わせて自由に食事量やタイミングを設定してください。私は一度に鶏むね肉600g(タンパク質120gくらい)食べますが消化不良も起こしませんし、筋肉量も落とさず減量できています。
*余裕があればトレーニング日はトレ後の食事を高カロリーに設定するとよいです。特に炭水化物は必要量の大部分をトレーニング後に摂るのがオススメです。
- できればハードにトレーニングしてほしい
消費カロリー>摂取カロリーにすれば体重は落ちるので食事管理だけでも減量できるのですが、リーンゲインズの特徴は高強度のトレーニングと食事管理を組み合わせることで筋肉量と筋力を維持・向上させ体脂肪率を効率よく落としていくことにあります。そのためバーベルなどの器具が使える環境で取り組むのが理想ですが、自宅でのスクワットや腕立て伏せなどでも成果は出ますのでまずはできることから始めていけばよいと思います。
有酸素運動は必要ない
ダイエット=有酸素運動というイメージが強いですが、実は体脂肪率を落としていくのに有酸素運動はあまり効率が良いとはいえません。時間あたりのカロリー消費もそれほど多くありませんし、長時間の有酸素運動は筋肉の分解を促進するためトレーニング効果を弱めてしまいます。大げさに言えば有酸素運動をやればやるほどマラソン選手のような体型に近づいていってしまうということで、普通のダイエットが目的ならウエイトトレーニングに集中するのをおすすめします。女子がアブクラックス(腹筋に綺麗な縦線が入った状態)を作ったり男性が6パックの腹筋を手に入れるレベルの減量でしたら確実に有酸素なしで可能です。
*時間に余裕があって少しでも消費カロリーを増やしたい、気分転換に有酸素運動がやりたいという人はウォーキングや軽いサイクリングなど息が荒れないような低強度の運動を行うようにしましょう。膝や腰に痛みがある方はプールでのウォーキングも関節への負担が減らせるので有効です。また、ボディメイク系の大会に出場するため絞れるだけ絞りたいという場合は有酸素運動を導入した方がよいケースもあります。
リーンゲインズの注意点
8時間という数字に魔法のような効果があるわけではないので注意してください。8時間以内に食事を済ませたとしてもカロリーオーバーであれば太ります。適切な食事管理が大前提で、断食はそのための手段でしかありません。16時間断食して暴飲暴食がチャラになることはありません。
逆に8時間を過ぎたら頑張りが台無しになるなんてこともないので安心してください。8時間にこだわりすぎてストレスになっては本末転倒なので、9時間でも10時間でもその日に無理なくこなせる時間枠を設定しましょう。
まとめ
- 体重1㎏あたり2gのたんぱく質を中心とした栄養素・カロリー設定が必要
- 16時間の断食によって食事のストレスを減らし、無理のないダイエットが可能
- 自由に食事回数を設定できるのでライフスタイルに合わせて取り組める
- バーベルなどの器具を使ったトレーニングを推奨
体を変えていくためには頑張らないといけないこともありますが、本当に気をつけなければならないポイントは意外とシンプルなもの。
YouTubeや雑誌などで一流アスリートの生活を見て「自分には無理かも」と諦めていた人も気軽に取り組める手法ですので、今まで減量に失敗してきた方は是非チャレンジしてみてください。
リーンゲインズやトレーニング、食事に関する質問もお気軽にどうぞ!
コメント
コメント失礼します。
リーンゲインズ凄く興味深い内容でした。
私は今年からフィジークに挑戦しようとしてるもので丁度減量期に入っています。
リーンゲインズを試してみようと考えているのですが、リーンゲインズ中のトレーニングタイミング及び断食中のアミノ酸摂取の良否について伺いたいのですが、宜しくお願い致します。
池田さん
コメントありがとうございます!
トレーニングのタイミングはいつでも構いません。日中はお仕事をされることを考えると、食事及びトレーニングのタイミングは大きく2パターンに分かれるかと思います。
①早朝トレパターン
6:00-7:30トレーニング
8:00 第1食目
12:00 第2食目
16:00 第3食目
②夜トレパターン
12:00 第1食目
16:00 第2食目
18:30-20:00 トレーニング
20:00 第3食目
食事は8時間以内に済ませるのが基本ですが、8時間という数字にこだわる必要はありません。お仕事や家庭の都合に合わせて柔軟に計画を立ててみてください。
断食中のアミノ酸摂取に関してですが、10g程度の摂取でしたら断食の効果を帳消しにするようなカロリーではないので、断食中に早朝トレーニングされる際にプレワークアウトドリンクとしてEAAやBCAAを摂ってもよいと思います。
減量頑張ってくださいね!
こんにちは!
コメント失礼します!
身体を鍛えている方は筋分解を怖がってしまうと思うのですがそういう事はありましたか?
例えば断食以外の時間で朝ホエイプロテインだけ飲む、夜はガゼインのプロテインを飲むですとか。
そもそも16時間空けたくらいでは筋分解を気にすることはないのですか?
ご教授頂ければと思います!
よろしくお願いします!
あつすしさん
コメントありがとうございます!
1日に必要なタンパク質が8時間以内に摂れていれば、断食による筋分解への影響はないというのがリーンゲインズの考え方です。
実際に僕が減量した際も大きな筋減少はなかったと感じています。
まずは一日に必要なたんぱく質をきちんと毎日摂れるように意識しましょう。
[…] リーンゲインズとは?現役ボディビルダーが解説 https://mrleangains.com/leangains/tips/ […]
Basshiba Studioさん
ブログで取り上げていただいてありがとうございます!
今後も無理のない範囲でリーンゲインズ頑張ってくださいね。
こんにちは。
とてもわかりやすかったです。
記述にあるイートストップイートに興味があるんですが、なかなかリーンゲインズとの比較みたいな情報を見つけることができません。長所短所などご存知でしたら教えて頂けたら幸いです。他の記事も読んでみます。通りすがり失礼しました。
すぎおさん
コメントありがとうございます。
イートストップイートに関しては断食時間が24時間と長くなるためインターミッテントファスティングの中でも特にマイナーな食事法です。
そのためインターネットでもなかなか体験談が見つからず、私自身試したことがないので何とも言えない部分が多いですが、基本的な効果に関してはリーンゲインズと大差ないと考えてよいでしょう。
減量の効果を決める一番重要な要素は摂取カロリーと栄養素のバランスなので、1週間に摂取するカロリーと栄養素のバランスが一緒ならリーンゲインズもイートストップイートもほぼ同じ効果が得られると思います。
あくまでも断食は摂取カロリーを守るための手段でしかないので、断食時間はご自身の生活リズムに合わせて最適なものを選んで頂くのが一番だと思います。
[…] ※引用元はこちら […]
はじめまして。これからリーンゲインズをやってみようかと検討中の者です。
前の方と重複してしまうかもしれませんが、私は午前中にしかトレーニング時間が取れず、それも週2回。食事時間は12時~20時にしたいと思っています。
現在はトレーニング前と最中にCCD、BCAA、EAAを飲んでいます。
リーンゲインズに入ると午前の断食時間中にトレーニングをすることになります。
BCAAやEAAはカロリーゼロなので気にしなくとよいと思いますが、糖質は上のご回答のようにトレ前とトレ中合わせて10gくらいまでは摂って良いということでしょうか?
また基本週3回と聞くトレーニングですが、週2回ではやはり不足でしょうか?
まっさん さん
質問ありがとうございます。
順番に回答していきますね。
まずBCAAやEAAといったアミノ酸ですが、カロリーゼロではありません。たんぱく質と同じように1gあたり4kcalのエネルギーがあります。
海外のアミノ酸サプリメントにカロリーゼロと表記してあるのは、法律の関係で単体のアミノ酸由来のカロリー表記が禁止されているためで、実際にはしっかりカロリーがあるので注意して下さい。
これを理解した上でトレーニング中に10g程度の摂取なら断食状態に影響はないと考えます。
次に糖質ですが、カロリーの面ではアミノ酸と同じように10g程度なら問題ないとは思いますが、10gだと糖質量が少なすぎてカーボドリンクとしての機能が期待できない気がします。
かといって糖質量を増やしすぎると減量という目的と反するので、私なら減量中は炭水化物のサプリメントは摂らないですね。
最後にトレーニング回数ですが、理想は週3回以上ではありますが仕事などの都合上週2回しかトレーニングできないのであればその中でベストを尽くすしかないですね。
週2回だとまったく成果が出ない、なんてことはないので可能な範囲で頑張ってください。
ご回答ありがとうございます。
ゼロカロリー表示なのに実はカロリーがあるというのは全く知りませんでした。ショックです。
食事時間やトレーニング時間をやりくりして何とかやってみようと思います。
断食中にとって良いものは、水とお茶とブラックコーヒーくらいですか?
ホエイプロテインや、プレーンのヨーグルトはアウトでしょうか?
まーやんぐさん
返信が遅くなり申し訳ありません。
基本的なルールとしては断食中にカロリーのあるものは摂らず、プロテインやヨーグルトも8時間の枠に収めるのが理想です。
ただし一番大切なことはカロリーと三大栄養素のバランスなので、どうしてもお腹が空くようなら断食中でも設定したカロリーの中でプロテイン等摂取するのもありです。